ハバナ(1)〜いきなり、インパクトの強いタクシードライバーのおじさんに出会う

(7月2日)

キューバへの道

キューバは現代の数少ない社会主義国家で、アメリカとは大変仲が悪いです。ですので、アメリカのフロリダからキューバは飛行機でわずか2時間の距離にあるにも関わらず、アメリカからキューバには直行便がなく、またアメリカ国民は原則としてキューバに行くことはできません。そんなキューバに行くには、いろいろと他国と違う準備が必要になります。

保険の準備

地球の歩き方によると、キューバに入国するには保険の購入が必須、未保険の場合は入国前に強制的に購入させられる。しかし、私たちが保険を購入しているアメリカの保険会社はキューバをカバーしておらず、キューバもこれを認めないため、どこか他の保険会社と契約する必要があります。日本から出発する場合は日本の保険会社と契約してくればよいと思いますが、私たちはアメリカから出発していたため、メキシコの空港で旅行会社を見つけ、そこでメキシコの保険会社の旅行保険に加入しました。1週間のカバーで値段はひとりあたりUS30程度だったと記憶しています。実際にキューバ入国時に保険の提示を求められることはありませんでしたが、いずれにせよ旅行保険は必要です。

お金の準備

キューバには自国民用のCUPと外国人用のCUCという二種類のお金があり、外国人は外貨をCUCに両替して使います。CUCのレートはこちらのページで確認することができますが、1USD=1CUCとなるように設定されています(ちなみに、1CUC=24CUP)。ただ問題は、USDは両替時に10%の税金をとられるため、レートがとても悪いということです。そのため、外貨はEURで持ち込むのが最も良いとされているのですが、私はメキシコ入国時点でEURを持っておらず、手持ちのドルを持って行くか、メキシコペソをメキシコのATMで引き出してこれをCUCに変えるか、なんとか手持ちのドルをメキシコ内でEURに両替する手段がないか、頭を悩ませました。Tripadvisorなどで調べてメキシコの両替所をまわって得た結論は次のとおりです。1)メキシコ内で手持ちのドルをEURに両替するのは両替の過程でレートが悪くなり損、2)メキシコペソはCUCへの両替レートがかなり悪い、3)しかし、ドルで税金をとられるよりはペソで持ち込んだ方が(当時のレートでは)多少マシ。そのようなわけで私はやむなくメキシコでキューバ用にメキシコペソを引き出しましたが、キューバに旅行される方は、日本からであれば日本でユーロを用意すること、その他どこからであってもとにかくユーロ現金をレートの良い国で用意することをおすすめします。

なお、キューバ国内にもATMがあり、国際キャッシュカードでお金が引き出せるらしいのですが、私はアメリカの銀行のカードしか持っていなかったのでそんなことができるはずがありません。というわけで、恐る恐る多くの現金をキューバに持ち込むことになりました。参考まで、トリップアドバイザーのこちらのページは渡航の準備をする上で役立ちます。

また、キューバ国内での両替は、国が管理しているため、空港、ホテル、銀行、どこでしても原則としてレートが変わらない(はず)です。私は空港とホテルで両替しましたが、どちらもレートはほぼ同じでした。

Interjetでキューバへ

メキシコからキューバに行くには、キューバ国営のCubana航空を使う、メキシコのInterjetを使う、などの方法があります。私たちは「お金のないキューバの航空会社って危ないんじゃないかしら、、」というイメージと、Cubana航空はとにかく遅れまくるしロストバゲージも多いという話から、お金を出してInterjetにしました。

さて、Interjetにメキシコシティの空港で乗る時のこと。Interjetには案内をしてくる係員がいないので、特にチケットの確認などせず、見つけた大行列のInterjetのカウンターに30分並びました。やっとチェックインカウンターにたどりついたところ職員のお姉さんは一言、「あ、これは国際線のチケットだから国際線のカウンターに行ってね!」。な、なんと!そんな落とし穴があるならまわりに並んでいる人に一言聞けば良かった!

そして、メキシコシティの空港は広い!国内線ターミナルから国際線ターミナルまでひたすら歩き、やっとInterjetの国際線ターミナルを見つけた時には搭乗2時間前。ぎりぎりだなと思っていたら、こんどはカウンターまで大量の段ボールやら荷物を持った人々の列(写真を撮らなかったことが悔やまれる)。当時は何だこれはと思いましたが、キューバに住む親族のために物を大量に持ち込む人たちでした。電化製品といったわかりやすいものだけでなく、トイレットペーパーの24ロールを持ち込んでいる人もいた記憶があります。キューバへの入国を目指す人は、正しく国際線のゲートに、少し時間に余裕を持って行くようにしましょう。

ちなみに、キューバに入国するには事前にツーリストカードというものを購入する必要があります。これは、Interjetのカウンターで買いたい旨を伝えたらあっさり買うことができました。US20ドルぐらいだったと思います。

いざ、キューバに入国

飛行機がハバナに到着した後、どきどきしながらキューバの入国審査へ。とても古い入国審査のボックスが並び、カウンターの向こう(キューバ)はドアのついた壁の向こうで見ることができません。一番ハラハラしたのはここでキューバのスタンプをパスポートに押されたら困るなということ。キューバのスタンプはアメリカ入国時にトラブルのもとになります。しかしこれは、「言えばパスポートに押してくれるが、何も言わなければ後で回収されるツーリストカードに押してくれる」という運用のようで、無事パスポートには押されることなく入国することができました。

空港から市街へ〜おしゃべりのタクシードライバー

このサイトで宿(カーサ、民宿)に申し込み、タクシーの送迎(30CUC)も依頼していたので、空港を出たら若いお兄さんが私の名前を持って立っていました。お兄さんの案内でニューシネマパラダイスのアルフレードを少し日焼けさせた感じのおじさんが運転するタクシーで、ハバナ市街へ。

このおじさんが英語がうまく、お兄さんはおじさんの息子だということ。お兄さんは大学を卒業したばかりなのですが、キューバでは教育が大学も含めて無料な代わりに、大学を卒業して仕事に就くまでの2年間を無料で国のために働かなければならないそうで、おじさんのタクシー稼業を英語の練習も兼ねて手伝っているのだそうです。お兄さんが「自分はAccounting(会計士)になるんだ」と言ったところ、おじさんがすかさず「AccounTANT!」と子音を立てまくって注意するなど、非常に微笑ましい感じです。おじさんはしゃべり好きで、私のとりあえずのキューバへの質問にいろいろと答えてくれました。キューバの教育の仕組みについて尋ねると、何でも、キューバでは高校時点で大学で専攻したい科目を申請する必要があり、高校までの成績と申請に基づいて大学での専攻は決められるということ。そして、大学での専攻によって卒業後に就ける仕事はだいたい決まっており、お兄さんは大学で経済を専攻して会計士になるのだそうです。つまり、将来の仕事がほぼ高校時点で決まるということでしょうか。大変です。おじさんは、日本がオリンピックに立候補していることや、日本がオリンピックをやった年など、いろいろなことを知っています。総じて物知りな感じで、どこでそんな情報を得たのと思いましたが聞きそびれました。

さて、このしゃべり好きのおじさん、「昼は食べたか?まだなら、自分たちもまだで良いレストランがあるから行かないか」と。それは渡りに船ということで、タクシーはハバナ北部の丘の上にあるカバーニャ要塞の方角へ向かいます。おじさんがタクシーを走らせながら街の説明をしてくれるのですが、ハバナ市街のあっちのホテルはアメリカが建てたホテルで革命後にキューバが摂取、こっちのホテルもアメリカが革命直前に完成させたホテルで使い出す前にキューバが摂取、とそんな建物ばっかりです。さらにハバナの街から丘に行くには海底トンネルを抜けて行くのですが、この海底トンネルもフランスの会社が革命の前後に完成させたもので、その会社は結局キューバから代金を回収できなかったということ。しかし、「パナマ運河のように」建設会社にとってレピュテーションの高い(?)トンネルのため、先日その会社は無償でこのトンネルをメンテナンスしてくれたのだとか。

通行料を払って丘の上から南方向にハバナの街を見下ろすと、おじさんの歴史解説は止まりません。そもそもこの地に入植してきたスペイン人たちがどのような経緯で丘とハバナ市街にある要塞を建てたのか、当時の海戦の様子も交えて詳細に説明してくれます。おじさん、タクシー運転手じゃなくて旅行ガイドやったらどうなんだ。

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(丘の上よりハバナを一望)

これは今だから推測できることですが、キューバではほとんどの産業は国営企業によって担われており、「自営業」(個人でやるレストランや民宿はここに入る)や一部の農業などごく限られた部分のみがプライベートセクターで担われています。おじさんがあんなに英語が堪能で知識豊富なのにタクシードライバーをやっている理由は、おそらく旅行ガイドなど多くの観光客にサービスする職種は民間に開放されておらず(実際に、すべてのツアーはいくつかの国営企業により担われています)、タクシードライバーとして観光客に個々人にサービスして外国人からチップをもらった方がよほど実入りが良いからではないかと思われます。あとは、一回就いた仕事を変えるのは難しいという事情もあるかもしれませんね。

丘の上のレストランで食べるシーフード

さて、おじさんに連れられていったお金の上のレストランでシーフードをいただきます。味はなかなか良かったです。

ここで面白かったのは、会計44CUCに対して50CUCを出しておつりをもらおうとしたところ、私が妻を残して席を立っている間にお店のお姉さんがおつりを全額チップと勘違いしてもっていってしまったこと。おつりがもらえなかったのは大して気にならないのですが、この時のお姉さんのリアクションが妻によると「(え!6CUCもチップもらえるの!)Thank you, Thank you, Thank you!」と全力の笑顔でお礼を言われたそうです。

後でよく考えてみると、キューバの人々は1CUC=24CUPのCUPで暮らしておりこれだと食べ物を激安で買うことができます。例えば、私たちが5CUCでサンドイッチを買うところ、それよりも質の劣るサンドイッチをキューバの人たちは5CUPで買えるイメージです。飲み物については、全く同じ水を私たちは1CUCで買いますがキューバの人は1CUPで買えます。ですので、言って見ればお姉さんにしてみれば私たちが残した6CUC=6ドルは、彼女の価値観で見るとざっと6*24=144CUP=キューバ国内においての144ドルぐらいの価値があるのかもしれません。また、CUCでしか買えない輸入品もキューバには多く存在しますので(たとえば、ガソリンはCUC払い)、いずれにせよキューバでの1CUCの価値は私たちが1ドルに対して持つよりもずっと高いと言えます。アメリカの感覚だと44ドルの請求に対して6ドルのチップを渡しても全く違和感ないのですが、このCUCとCUPの価格のギャップに気づいた後は、チップは原則としてすべて1CUCにすることにしました。

その他、このレストランにいた流しのミュージシャンが腕が良かったのでCDを10CUCで買い、さらにタクシーで宿まで届けてもらった後、お世話になったおじさんにチップを5CUC渡しました。チップを渡した際、おじさんが全力でニンマリしていたことは言うまでもありません(あと、丘の上のレストランがおじさんの親族の経営かおじさんにコミッションを払っていることも疑いなし!)。このおじさんのインパクトはキューバ旅行中でも1、2を争うレベルで、また会いたかったのですが結局再開はかなわず、今でも残念に思っています。

この日は宿に到着した後、キューバ内でのツアーをツアーデスクに探しに行ったり、町をぶらぶら歩き回ったりして終わりました。続きは、また明日。

本日の宿

Casa Colonial

Trip AdvisorにはCasa Ricciと書かれていますが、Casa Colonialという名前です。ハバナのビエハ広場と国会議事堂の間にあり、旧市街を観光するのに便利な立地。私が泊まった時は一泊30CUC、朝食は一人4CUC。Robertoという若い男性、母親、(たぶん)Robertoの奥さんの3人で宿をやっています。部屋は直接外に面していませんが、建物の中が吹き抜けになっており、部屋はこの吹き抜けに面した形で配置されており、窓もあります。窓がこの吹き抜けに面した一つしかなく風の通りがあまり良くないため、非常に快適な部屋かと言われると?ですが、クーラーもついておりそれほど問題はありません。Robertoは英語ができたりできなかったり(英語に疲れるとだんだん言葉が出てこなくなる)ですが、Robertoも奥さんもとても親切で快適に過ごせます。この宿についてはいろいろと逸話があるので、また触れていきます。

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(宿の吹き抜けはこんな感じ)

ハバナ(2)に続く。