サンティアゴ(2)〜最高のチリワイン、?な世界遺産バルパライソ、サーモンが美味しい金太郎

(7月27日、28日)

チリのワイナリーとバルパライソ

シカゴで飛行機のチケットをとる前は、この日にはブラジルに向かおうと思っていたのですが、結局私たちが使っているLan AirPassではこの日はブラジル行きのチケットがうまく確保できなかったので、サンティアゴにもう一泊します。何もしないのももったいないので、検討の末、サンティアゴ郊外にあるワイナリー、リゾートとして有名なビニャデルマル、世界遺産のバルパライソを巡るツアーにTouristikで申し込みました(サンティアゴの旧市街で赤い服を来た人々が営業をしており、対応も非常にしっかりしていました)。お値段はひとり100ドル以上で、高い!しかし、ワイナリー巡りとバルパライソ行きを一日にまとめてこなそうとすると選択肢が少なく、いくつかあるツアーの中でも最も内容が充実していそうな(詰め込み気味の)ものを選ぶとこれになりました。結論としては、残念ながら世界遺産のバルパライソが期待はずれでツアーにお値打ち感はなし。でも、ワイナリーで飲むチリワインは抜群に美味しいので、サンティアゴの郊外アクティビティとしてはワイナリー巡りを強くプッシュしたいと思います。

Emilianaの有機ワインが抜群に美味しい

ツアー最初の訪問先は、サンティアゴ郊外にあるワイナリーEmiliana(エミリアーナ)。このワイナリーはチリにおいて(南米において?)有機農法で農薬を一切に使わずにブドウを育てワインを作るパイオニアということで、そのワインは様々な賞に輝いているとか。

有機農法、オーガニックという名前自体はもちろん聞いたことがありますが、私はこのワイナリーを訪れるまで恥ずかしながらそれがどういう意味でどのように有機の野菜や果物が作られているのか、全く知りませんでした。ワイナリーでの説明は結構感動的でした。農薬を使わないと、虫に食われたり病気にかかったりしてブドウはダメになりやすい。それを避けて、ベストのブドウを作り出すためにどうするか。それは、自然の摂理をできる限り理解して、自然の摂理に従ってブドウを育てることだと言います。例えば、農場にはブドウ以外にも様々な草花が植えられていますが、すべての草花には農場に存在する意味があるそうです。各季節において、ブドウの害虫がブドウ以外の草花に行くように、虫にとってエサになったり虫をおびき寄せる草花が植えられているのだとか。さらに、農場では雑草を取り除くために鶏!を使っているそうで。それも一種類ではなく、ある一定の場所を歩き回る習性のある鶏、広い範囲を移動する鶏など、様々な習性を持つ鶏を組み合わせて使って雑草を取り除くのだそうです。ブドウの芽を食べてしまわない鶏を使うことも大事だとか。そしてさらに驚いたのは、なんと草花は月の満ち欠けに応じて呼吸が変わるので、ブドウにやる水も月の満ち欠けに合わせて調整するのだそうです。ええ、そんなこともするのか!

ワイナリーのお姉様曰く、有機農法は、それを行う土地、季節、生態などいろいろなことを知らなければできず、それらの複雑な自然の営みを理解した上で、いろいろな草花を植えたり、鶏など動物を管理する必要があり、はじめはとても手間ひまがかかるそうです。でも、一度軌道に乗れば、後は農薬に頼らずに自然が美味しいブドウを生み出してくれるようになるので、むしろとても利益率は高いということ。面白いですね。でも、自然の法則に則っているが故に、ある場所でうまくいったから他でも同じうまくできるとは限らないのが有機農法の難しいところで、逆にこのコピーの難しさは競争力につながるのだそうです。ビジネススクールの戦略の教科書のようなご説明でした。

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(チリにおける有機ワインのパイオニア、Emiliana)

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(冬なので寂しい風景ですが、ワイナリーの方が丁寧に英語で有機農法でブドウを育てる際のコツや大変さを説明してくれます)

さて、お姉様の説明で有機農法に感心した後に、実際にワインをいただきます。4種類のワインを、軽いものから重いものまで順番に飲み比べていきますが、これが抜群に美味しい。いや、美味しい!!!!長旅で荷物を多く持てないにも関わらず、お土産にワインの購入を検討しましたが、スマートフォンで調べたところワイナリーでの購入に比べて多少のコストアップ程度でわりと良心的な値段で日本でも商品が買えることがわかったので、お土産に買うのはやめました。この素敵なEmilianaには、日本に帰った後ワインを買って飲むことで貢献させていただきたいと思います。いやー、しかし、うまかった。

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(4種類のワインを飲み比べ。とても美味で、4杯とも完飲)

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(飲み比べたワインたち左から右に行くにしたがってフルボディに。個人的には、左から二番目のNovasと、最後のCoyamが特に美味しかった!日本でも調べると売っているので、日本に帰ったら必ずまた飲みたいと思います)

チリのリゾート、ビニャデルマルでガッカリその1

酔っぱらった乗客たちを乗せ、バスはチリのビーチリゾートビニャデルマルへ。ここは、チリで一番人気のリゾートなのだそうですが、この旅行でカンクンやキューバなどカリブ海を見てきた私には大したことがないように見えました。。。一応公平のために申し上げると、いまは冬なのでビニャデルマルは閑散としています。ここはサンティアゴに住む人の別荘も多いのだそうですが、その多くは冬なので誰もおらず町は寂しげです。ですので、夏に来たらまた違う印象を持つかもしれませんが、少なくとも冬に来ても良いことは特にありません

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(ビニャデルマルの有名な花の時計。警官がバスが5分以上停車しないように常に見張る人気ぶり。しかし、そこまでのものか!!??)

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(海に喜ぶ観光客たち。すでに私たちはこれまでの旅行で海も川も堪能してきたので、それほど盛り上がれず残念。あと、ツアーで連れて行かれたEnjoy del Marというレストランが、値段はそこそこするわりに最悪に食事がまずくガッカリ)

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(ビニャデルマルには、イースター島から運ばれたモアイ島が一つだけあります。イースター島はパスしているので、ここでモアイ像をパチリと写真におさめて満足)

世界遺産バルパライソで、ガッカリその2

続いて、バスは世界遺産バルパライソへ。ここでひとつ想定外だったのは、ツアーバスが、途中で立ち寄った パブロ・ネルーダの邸宅という場所以外、一度も停車しなかったことです。おいおい、歴史的な町並みが世界遺産に登録されたのに、町を歩かせてくれないんじゃ良さがわからないじゃない。時間の制約なのか、治安の問題なのか(バルパライソは治安があまり良くないらしい)わかりませんが、そんなわけでバルパライソの魅力はよくわかりませんでした。

ただ、バスから降りて町を歩けたら魅力を感じられたかというとそれもやや微妙かもしれません。Wikipediaの説明によると、「迷路のように入り組んだ歴史のある美しい街並が2003年に、UNESCOの世界遺産に『バルパライソの海港都市とその歴史的な町並み』として登録された。」ということなのですが、街をバスで走り回った感想としては、そんなに素敵な歴史的な街並かしら?という感じ。これまた公平のために申し上げると、夏に強い光を受けたバルパライソの街は、カラフルな街並に光が良く映えてそれは美しいそうです。ですので、ここも冬に来る場所ではないのかもしれません。

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(街は少しガラの悪い雰囲気)

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(歴史的な建物らしいのですが、何だっけ?)

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(この街並が、強い太陽の光を浴びると美しいのだとか。冬はいまいち)

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(急斜面に作られた電車?も有名ですが、ツアーでは乗せてもらえませんでした。今はもっぱら観光用とのこと)

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パブロ・ネルーダの邸宅。チリの有名な作家の風変わりで凝った邸宅です。面白いですが、その作家や建築に興味がなければわざわざ来るほどではないかも)

サンティアゴの金太郎で、とても美味しいサーモンを食べる

サンティアゴに戻り、夜は歩き方に載っている金太郎という日本食屋に行きました。ここのサーモンは抜群に美味しいです。よく考えてみると、日本でもシカゴでもチリ産のサーモンを食べることはよくあります。その陸揚げ国に来ているわけですから、美味しくないはずがない。サンティアゴで刺身が食べたくなったら、是非金太郎に行って下さい。日によってお勧めが違うのですが、日本人の定員さんに聞くと丁寧に教えてもらえます。

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(金太郎の寿司と刺身。サーモンが美味しい!この日は白身魚も新鮮でお勧めされ、これまた美味しかったです)

サンティアゴのスーパー

金太郎の帰りは、旧市街にある大きなスーパーに寄り道。品揃えが豊富、すべての商品が綺麗にパックされている、整然とした陳列、すべてにおいてここは先進国のスーパーです。洗濯のしすぎで手がボロボロになっていたので、ここで掃除用のビニール手袋を購入しました。

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(とても先進的なサンティアゴのスーパー。チリは紛れもない先進国です)

El Aji Secoにて美味しいペルー料理を食す

昨晩金太郎に行った時、店員のお兄さんに聞きました。「明日日曜日のお昼、旧市街でランチにお勧めのところはありませんか?中央市場で海鮮は食べました。チリ料理で日曜日もやっているお店があれば、美味しいところに行きたいのですが」「うーん、チリは料理があんまり美味しくないんですよ。」(えー、お兄さん衝撃の発言!)「(ペルーに旅行した際に)ペルー料理は食べました?」「クスコなど山の方で美味しいものはいくつか食べましたが、いわゆる伝統的なペルー料理は食べていません」「それなら、美味しいペルー料理のお店がありますよ」

というわけで、やってきましたペルー料理のお店El Aji Seco。日曜日にやっているというだけでも素晴らしいのに、さらに金太郎のお兄さんお勧めの美味しいお店と聞けば、期待に胸が膨らまずにはいられません。実際、とても美味しい!チリで美味しいペルー料理が味わえるとは思いませんでした。とても満足です。

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(店構え)

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(ペルー風?炒め飯。少し味が濃いですが、美味しくてガツガツ行けます)

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(ペルーでよく食べたスープ。もちろん美味しいです)

旧市街散策

最後に旧市街をもう少しだけ散歩して、空港行きのタクシーに乗ります。チリは短い滞在でしたが、ボリビア滞在の疲れをとれる癒しの先進国でした。

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(サンティアゴの中心を歩く)

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(立派な建物。あいにく、勉強不足で何なのかは知りません。朝から無料でサンティアゴの旧市街を案内してくれる英語のツアーがあるのですが、今後の旅行の予定を確認したりホテルの予約をしたりしていたら、参加し損ねてしまいました。残念。きちんと事前に勉強して臨めば、サンティアゴの旧市街では、銃弾の跡など、ピノチェトの軍事政権からその後の民政に至るチリの歴史も見ることができるはずです)

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(乗っていませんが、地下鉄の駅。見るからに大変綺麗です。地下鉄の駅構内には、お店も多く出ていました)

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(ホテルの横にある、サンタルチアの丘)

外貨を稼ぐことができなければ先進国にはなれない

キューバ編の「競争力がなく外貨を稼げない国は貧しい」という項目ですでに触れましたが、チリでは外貨を稼げることが先進国の条件であることを強く認識しました。チリには、鉱業、製紙業、漁業、ワイン、果物・野菜という5つの重要な産業があり、どれも外貨を稼いでいます。国の発展理論に、中進国の罠というものがあります。世銀は一人当たりGDP約10,000~12,000ドルをいわゆる「中進国」として定義しているそうですが、この段階までの発展を成し遂げた国はそれなりにあるものの、この壁を破って先進国に近づいていけた国は非常に少ないという問題です。チリの一人当たりGDPは15,363ドル(外務省)で中進国の罠を破りつつあり、南米初のOECD加盟国として南米で最も先進国に近い国です。そのチリの原動力になっているのは、まさに外貨を稼ぐこれらの産業なんだなと強く感じました。

チリが先進国になるために必要なことは何か〜中進国から脱しつつあるチリから学べること

しかし、中進国が先進国に追いつき逆転するには、何が必要なのでしょうか。中進国の罠は、後から、産業と技術の発達した先進国に追いつくのは、非常に困難という単純な含意を持っていると思います。先進国が先進国たる所以は、アメリカは基軸通貨ドルとiPhoneで金を稼ぎ、日本は自動車と機械で金を稼ぎと、世界的に需要の大きな分野で政治的、経済的、技術的、文化的にカネにつながる何らかの優位を持っていることによるものです。後から追いつく国がiPhoneと同等に戦える会社を持つことは極めて難しく、それに挑戦しているのは韓国のサムスンや台湾のHTCなど極めて限られた国の企業に限られ、それも難しい戦いを強いられています。経済がグローバル化すると競争をより厳しくなり既存のマーケットでの先進国企業の先行者利益は大きくなるでしょうから、途上国の後発企業がこれと戦って勝つのは至難の技でしょう。しかし、現代においてグローバル化が受け入れられているのは、(少なくともこれまでのところは)厳しさを増す競争による負担以上にグローバル化によって経済のパイが大きくなることによる恩恵が大きかったということをおそらく示しているのでしょう(チリは、多くの国と自由貿易協定を結び、経済発展に結ぶ付けています)。また、過去永遠に続いた帝国はなく、100年続く企業はほとんどない事実が示しているように、先行者が永遠に先行し続けることはありません。しかしそうは言っても後ろから追いかける者が先行者を逆転をするのは簡単ではなく、先行者が何らかの理由で弱り、追うものが厳しい環境の中でも知恵を絞って工夫をして何とかひっくり返す一手を出す必要があります。そう考えるのであれば、逆説的ですが、厳しくても競争的な環境に身をさらすことが、中長期的には先を行くものに追いつき追い越す機会を増やすとも言えるのかもしれません。

チリは一人当たりGDPが15,000ドルですが、私は実際にチリを訪れて、南米の中では明らかに他国より進んでいてこれだけ産業基盤がしっかりしているチリですら一人当たりGDPが15,000ドル「しか」ないのか、と感じました。私たちが住む先進国になるハードルは世界的には極めて高いのです(逆に言えば、日本は他国がうらやむ多くのものを明らかに持っている国なのです)。チリがさらに所得を増やしていくには、どのような道があるのでしょうか。以前読んだ日経ビジネスの記事ではチリコンバレーというものもありました。チリが、自由貿易協定で拡充した自らの経済圏を使い、鉱業、製紙業、ワイン、漁業、農業という既存の産業基盤の上にさらに何を乗せていくのか、今後も興味深く見て行きたいと思います。この国を見ることで、途上国を見るのとはまた違う、先進国に近づきつつある国の課題や問題を学ぶことができると思います。

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(私がサンティアゴでチリが先進国だなと一番感じたのは、この道路の電光掲示板の存在です。電光掲示板は、設置に費用もかかるし、表示する内容を送るシステムも必要だし、電気などの維持コストもかかり、明らかに発展途上国ではペイしないアイテムです)

さて、今晩は飛行機でブラジルのサンパウロへ。サンパウロを経由し、ブラジル北部の町サンルイスを目指します。チャオ、チリ!