ボリビアを出国しチリへ〜ウユニからカラマへ大変なバスの旅

(7月25日)

ボリビア出国の日

今日は、ウユニからチリのカラマへバスで移動します。

ボリビアでは、主にラパスとウユニに滞在しました。ボリビアは他国に比べて産業の成熟度が低くて一般的なサービスの質が低く、常にどこかあきらめと警戒を抱かないといけない国でした。また、これは印象論にすぎませんが、他の南米諸国と比べて外国人に対するホスピタリティが少し低い国のような気がします。なんだろう、あくまでも私たちとあなたたち外国人は別の存在で、外国人はお金をとる対象というか。いや、ホスピタリティが低いというというよりは、全体として明るさが足りないと言うべきか。これは、山の民族の民族性なのか、所得水準の低さから来る余裕のなさなのか、そのあたりはわかりませんが、全体としてペルー、チリ、ブラジル、エクアドルといった国々と比べて暗い印象を受けたのは確かです。そして、(これは何よりも重要かもしれませんが)ラパスもウユニも3000m級の高山にあり、冬はとにかく寒い!そんなわけで、チリへ出国する時には「ああ、これでボリビアから脱出できる」とちょっと思ってしまいました。

しかしもちろん、ボリビアでも明るくて良い人々にも多く会いました。ウユニを案内してくれたドライバーのおじさんたちや、町外れにあるホテルで対応をしてくれたあどけない少女、ラパスのお祭りで楽しそうに遊んでいた人々を忘れることはないでしょう。ラパスは危ないながらも不思議な魅力のある町でしたし(町の魅力という意味では、ペルーのリマより味があると思います)、ウユニも愛のないエントリを書きはしましたが行って良かったと思います。

余談ですが、(バックパッカーが現地の安レストランに入っていくということではなく)外国人観光客と現地の人がどれぐらい「普通に」一緒に食事をとるかは、国によってかなり差があります。メキシコ、チリ、ブラジルでは、外国人観光客とガイドは同じ場所で食事をします。ペルーは場所によるという感じで、ボリビアでは外国人観光客と普通の人々が食事をする場所は明らかに別です(ボリビアで日本人が「美味しい!」と素直に感じられるグレードの高いお店は、ボリビアでは富裕層しか行けません)。そして、キューバでは外国人観光客が食べるレストランで現地の庶民が食事をすることは基本的に不可能です。このあたりには、見事にその国の経済水準が現れているように思います。

まとめとしては、ボリビアはすごく楽しかったけれども、もう一度行きたいかと言われたらまあいいかなという感じです。あと、ボリビアは海への出口がなく貧しくて気の毒に思えてならないので、ウユニのリチウム開発がうまくいって少しでも国が豊かになれば良いなと思います。

安宿Salbadorは勘弁して欲しいクオリティ

さて、改めてチリのカラマへの道。この日は、大した出来事はなかったのですが、ある意味旅行の中でも指折りの記憶に残る日になりました。

まず、前日から泊まった宿についてご説明しなければなりません。この日のカラマ行きのバスは、午前4時に出発します。私たちは私たちがウユニで初日に泊まった宿は町外れで、深夜早朝に重い荷物を持ってバスターミナルまで歩くのは少し危ないです。そこで、Hodakaのおばちゃんから勧められた、El Salvadorというバスターミナルの目の前にある安宿に泊まりました。バストイレ付の部屋で、一泊わずか10ドル。

Hospedaje El Salvador

しかし、この宿はおじさんには無理だった!まず、寒い!冬のウユニは夜になるとかなり冷えるのですが、この宿の客室には暖房がまったくありません。そして、バスルームがカビすぎていて、しかも水シャワーのみ。カビだらけのバスルームには前の客が洗濯で干したとおぼしき男物のパンツがかかったままになっており、何とも言えない雰囲気です。宿泊者名簿を見ると、20歳前後の欧米の若者ばかりが宿泊しています。30歳を過ぎておっさんには、この宿は無理だ!

というわけで、シャワーは浴びず、服もジャンパーも着たまま、朝3時頃まで仮眠をとります。寒すぎて、あまりよく眠れず。。この宿は夏なら良いかもしれませんが(それでもカビくさいとは思うけど)、冬は無理です。

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(安宿、サルバドール。入り口の見た目はしっかりしっているが、中はおじさんには無理な世界だった)

午前4時、バスはカラマを目指して出発

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(まだ眠りにつく前、夜のバスターミナルの雰囲気。ちなみに、ホステルの待合所でバスを待っていたら、宿主のおっさんにコカコーラのペットボトルに入ったsake(日本酒)を飲むように勧められました。寝不足で体調が悪く断りましたけど、いろいろな意味であれを飲んだら気分が悪くなっていたの違いない)

さて、凍てつく部屋を出て、大して暖かくない宿の待合所でしばらく待つと、カラマ行きのバスがやってきました。乗客がわさわさと乗り込み、午前4時にバスは出発。前日、ウユニ塩湖のツアーにともに参加した中国系アメリカ人も一緒です。彼は、長身でハンサムなフロリダ出身の若者で、仮に彼の名前をフロリダ君としましょう。フロリダ君とは、カラマまで一緒に行きます。彼はスペイン語ができるので、いろいろと助けてもらいました。

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(バスのチケットはこんな感じ。読みにくい字でHodakaと書いてある)

このバスがカオスでした。ボロい大型のバスに、旅行客(主に欧米人)とインディへナのおばちゃんなど現地の人々を半々の比率で詰め込みます。着席だけでなく、バス中央の通路にも乗客がギュウギュウに立ちで入るので、詰め込みです。私は通路側の席に座りましたが、横にインディへナのおばちゃんの荷物があって、動きがとれなかったです。そして、バスが超寒い。暖房がなく、サルバドールよりもさらに寒い。乗客が吐く息が窓一面に結露して、それがすべて凍り付き、氷で外が全く見えない、そんなバスです。そして、このバスはチリとの国境まで休憩なしで走ります。厳密に言うと、途中でいくつかの町で止まって乗客が乗り降りしているのですが、止まっている間も通路には人がギュウギュウに乗っているので外に行くことはできず、トイレに行きたくてもどうしようもありません。トイレが近い私としては、とにかく足の先が凍傷になるんじゃないかと思いながらも、少しでも寝て身体活動を抑えるだけです。

午前8時、チリとの国境に早くも到達する、、が!

バスはだんだんと明るくなる中、チリとの国境に近づきます。日が昇ると、日光で少しずつ窓の氷が溶けていき、外が見えるようになっていきます。ああ、太陽の力ってすごい、温かい、、と心底感じました。この深夜の極寒バスには、二度と乗りたくないです。フロリダ君は飛行機中心の私たちと違って南米でバスにもかなり乗っていたようですが、彼もこのバスは南米で乗ったどのバスよりも最低と言っていました。

さて、午前8時にチリとの国境に到着。なんだ、結構早いじゃん!しかし、ここには何もありません。

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(ウユニ=カラマルート、国境のボリビア側)

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(入管に関係すると思われる建物が、ちらほら建っているぐらいで、基本的に何もない)

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(こちらがボリビア側の出国審査をする場所)

ここには何もなく、トイレもありません。バスの到着後、数分で出国審査が始まります。妻のパスポートを確認している時に、ボリビアの審査官が入国のスタンプを見つけられず、携帯していた入国カードの情報に基づいて入国スタンプをもう一度押し直してしまうというハプニングがありましたが、私たちの審査も無事に終了。「入国スタンプ漏れは○○ドルの罰金だぞ」と言われたような気もするのですが、何を言っているかよくわからないフリをして無視してさっさと部屋を出ました。実際には、審査官が見つけられなかっただけで入国スタンプは入国時にちゃんと押されていたので、妻のパスポートにはボリビアの入国スタンプが二つと出国スタンプが一つあり、不揃いな状態です。でも、ボリビアには二度と行かないからいいんじゃないかと思います。

で、問題はここからです。8時30分には全員の手続きが終わりましたが、バスが出発する気配はゼロ。みな、近所の村の人が出している屋台で、朝ご飯とか食べてます。いったいいつ出るのやらと思いながら、日光で体を少しでも温めて待つこと1時間30分、午前10時ごろにやっとバスが出発です。ボリビア側国境にて、時間のロス2時間。

午前10時、バスは国境に向けて1km前進するも、そこで2時間の待ちぼうけ

バスは2分で国境に到着。今度はここで、人も荷物も降ろされ、チリから迎えのバスが来るのを待ちます。待つのは、文字通り何もない場所。本当に、なーんにもありません。ここで、ただひたすら、2時間待ちます。

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(何もないところで放り出されるバスの乗客)

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(とにかく、ひたすら待つ。バスの運転手は、地面に大の字になって寝てた)

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(旅行記の「はじめに」に使った国境の写真)

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(最果ての地です、っていう感じがすごい)

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(そびえ立つ山々の姿はすごいが、やることがない)

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(右にあるのは、お墓なのか)

この国境には、なぜか石で作られたサッカーコートのようなものがあります。待ちぼうけする人々が遊ぶためのものなのか。そして、サッカーコートの奥に使われていない倉庫のようなものがあるのですが、その裏にはひからびた人糞がたくさん転がっています。そうだよね、トイレもないからどうしようもなくなったらこの物陰で何とかするしかないよね。

暇で暇で仕方がないので、フロリダ君と世間話をして過ごします。フロリダ君は、大学卒業後に働いた後、この秋からメディカルスクールに入学を予定しており、将来は医者になりたいということ。アメリカでは、社会人として少し働いた後に大学院でキャリアをリセットするというのはとてもよくあることです、とたまにはタイトルの「キャリアの未来を考える」に関係することも書いてみます。その他、このバスに乗っているボリビア人は何なんだろう→ボリビアからチリに出稼ぎしている労働者や家族ではないか、とか、キューバで聞いたフロリダ資本家の話とか、旅のよもやま話をしてとにかく時間を潰します。

正午、バスがチリ側の入国施設まで1km前進するも、また待ちぼうけ

さてお昼も近くなった頃、やっとチリ側から迎えのバスが来て、バスはチリ側の入国手続き所まで前進します。やった!で、そこで入国書類が配られた後、またしばらく待ちぼうけです。どうも、一台前のバスの乗客をさばくのに時間がかかっている模様。

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(チリ側の入管施設。トイレもあります!)

午後1時、やっと入管と税関手続きが始まる

午後1時前、やっと入管と税関の手続きが始まります。チリは税関審査が厳しく、ほとんどの人がバッグを開けて中身を確認されています。

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(入管手続きに並ぶ人々。チリに入った途端に、建物が少し綺麗になります。ボリビアは南米一の貧しい国ですが、チリは南米随一の先進国なのです)

午後2時をまわったところで、ついに移動を再開

午後2時を過ぎたところで、バスの乗客全員の入国手続きが終わり、バスが再出発。朝8時にボリビア側の国境に着いてから、6時間をこの何もない国境地帯で過ごしました。フロリダ君も、このひどい仕打ちには憤っていました。

しかし、なぜこんなにオペレーションがひどいのか、理由はよくわかりません。ボリビアの入管やチリの入管の時間がボトルネックになっているのかとか考えてみたのですが、一応彼らは昼間はオペレーションしているようでしたし。ただ、こっちは朝8時には着いているのに、チリ側の迎えのバスが12時にならないと来ないというのが酷すぎる。だったらボリビア側も昼頃に国境に着けば十分だと思うんですが、どういうことなんでしょうか。ただ一つ、チリ側がボリビアをなめていることだけは間違いありません。そうでなければ、チリのバス会社も、チリの税関も、もうちょっとボリビアから来る人をスムーズに迎えようと努力するでしょう。さすが、正式な国交がないだけのことがあります。

余談ですが、チリとボリビア、ペルーは太平洋戦争を戦い、これに勝ったチリと、敗れたボリビア、ペルーは、今でも政治レベルでは仲が良くないそうです。アメリカとキューバもそうですが、利害関係のある近い国というのは世界のどこに行っても(少なくとも政治レベルでは)結構仲が悪いんだなと感じました。まあ、そういうものなんですかね。

もうひとつこの経験からは、これだけ時間のロスをしてもこのバスに乗っている人はクリティカルに痛くはないと言えます。旅行者はともかく、何らかの用事で乗っている現地の人が移動にこれだけ無駄があっても耐えているのは、時間対コストという意味でやっぱりボリビアは人の値段が安いということでしょう。もう少し自分の値段が高ければジープなりに個別に乗って無駄な時間を減らそうと思うでしょうしね。

さて、バスはカラマの町を目指して出発です。チリに入っても殺風景な風景が続きますが、ここは大銅山がある地域。チリ経済の屋台骨を支える、非常に重要な鉱山地帯です。

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(さびれた町を通り)

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(ただひたすらに)

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(赤茶けた山々が続く)

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(しかし、ここは大鉱業地帯です)

午後5時すぎにバスはカラマに到着、お疲れさまでした

午前4時にスタートしたバスの旅も、やっとカラマで終焉を迎えます。つ、疲れた。この日は宿がとれておらず、元気があれば少し探そうかと思っていたのですが、あまりに疲労困憊で探す気力がわかず。事前に手頃な値段の宿にメールで連絡をしてみたもののどこもいっぱいだったこともあり、歩き方に「外観はさほど豪華に見えないが、館内設備、サービス面でカラマ屈指のホテル」と紹介されていた値段の高いLican Antaiに宿をとることにしました。ツインルームが一泊90ドルぐらい。しかしこの宿、料金が高いわりには、Wifiが部屋で入らず、朝食もとてもしょぼく、全くお勧めできません。カラマは鉱山の町なので全体的に物価が高いわりにはサービスが良くないことで有名なので、そもそも観光で行くようなところではないかもしれませんが、もう少し良い宿があるでしょう。いずれにせよ、この時はあまりに疲れていたので、ふかふかのベッドで寝られれば、それで十分だったんですけどね。

宿を確保した後、近くのファミレスで食事をとってこの日はさっさと寝ました。

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(ファミレスの食事。疲れていたので胃にこたえる。しかし、疲れていなかったら美味しく感じられたかと聞かれたら、それもまた微妙。まさか、チリは食事がおいしく、、、ない?メキシコはファミレスでも十分に食事が美味しかったのですが)

明日は、飛行機でチリの首都、サンティアゴに飛びます。